呼吸器専門医が考えるねこちゃんの咳
ねこちゃんの呼吸器病はわんちゃんの比べて診断や治療が難しくなることが多く、簡易的な検査のみで誤診されていることが少なくありません。
そんなねこちゃんの呼吸器病の代表的な症状である「咳」について、呼吸器病を専門に診療してきた獣医師がお話しさせていただきます。
呼吸器専門医が考えるねこちゃんの咳
ねこちゃんの呼吸器病はわんちゃんの比べて診断や治療が難しくなることが多く、簡易的な検査のみで誤診されていることが少なくありません。
そんなねこちゃんの呼吸器病の代表的な症状である「咳」について、呼吸器病を専門に診療してきた獣医師がお話しさせていただきます。
一般の病院で治療が比較的簡単な病気を除けば、ねこちゃんの治りづらい咳の原因の多くは気管支にあります。もちろん、肺の腫瘍や難治性肺炎なども含まれますが、それらの多くはレントゲン検査で疑われてCT検査などの画像診断科を受診されるケースが多かったです。
ではレントゲン検査でわかりづらい気管支の病気とはどのようなものでしょうか？
教科書的には複数の疾患の記載があるものの、日常的に臨床現場で遭遇する機会は少ないものです。
今回はそんなねこちゃんの気管支疾患について内科専門医、さらには呼吸器専門医の目線から少しお話しさせていただこうと思います。
CHECK!
POINT01
ねこちゃんの気管支疾患は感染性、炎症性、寄生虫、腫瘍性など複数存在しますが、その中でも炎症性疾患が最多となります。その炎症性疾患には好中球が主体となる慢性弛緩支援と好酸球が主体となる猫喘息が存在します。過去には診断が進まないままに猫喘息と診断されている症例が数多く存在し、私自身もきちんと呼吸器病を専門に学ぶまではレントゲンで大きな異常のないねこちゃんの咳を猫喘息と仮診断して治療をしていたものです。実際のところ、慢性気管支炎と猫喘息は精査をしても完璧に区分けすることが難しいこともあるため、必ずしも誤診とは言えないというのも、ねこちゃんの気管支疾患を複雑にしている要因と考えています。
咳をしているねこちゃんの気管支疾患が疑われた場合は、①本当にその咳が気管支が原因で生じているものなのかを判断し、②その上で慢性気管支炎と猫喘息のどちらの可能性が高いのかを鑑別し、③気道の状態を加味して治療を組み立てる、という複数のステップを踏む必要があり、それをスキップしてしまう治療がうまくいかないことがあるものなのです。
POINT02
POINT01でも記載したように、慢性気管支炎と猫喘息では炎症のげんいんとなる細胞が異なります。前者では好中球、後者では好酸球です。これを判別するためには気道の細胞や分泌物の採取が必要となり、これが両者の区分けの難しくしている最大の原因です。気道の採材には全身麻酔が必要ですし、非常に細い内視鏡によって採材をすることもあります。さらに気道内にお水（生理食塩水）を注入して回収するため、一時的に呼吸が苦しくなる子も存在します。呼吸器を専門としている獣医師でも苦手な先生がいるくらいですから、専門外の先生が二の足を踏むのも仕方ないものです。
当院では今までの自身の経験を踏まえた上で、どこまで検査を実施するかをご家族とご相談させていただいています。もちろん全頭検査できればそれに越したことはありませんが、リスクも費用も掛かる検査ですのでご希望されない方もいらっしゃいます。メリットとデメリットを天秤にかけて、検査内容をじっくりとご相談しましょう。
POINT03
では診断がついたところで、治療法はどのようなものがあるのでしょうか？治療の主軸となるのは内服薬と吸入療法です。内服薬は薬の選択だけでなく投与量や投与期間も重要です。不要な薬を投与されていることもあれば、過剰な量で投与されていることも不足していることもあります。こればっかりは教科書通りにやってもうまくいかないことがあり、呼吸器を診始めたばかりのときは苦労しました。
吸入療法も同様です。細かいコツのようなものは教科書には記載されていないことが多く、そのせいで臨床現場に浸透していないよう感じます。吸入療法で多くのねこちゃんの症状が良くなっている、もしくは内服薬の量を減らせているのを経験して、やっと吸入療法の効果が実感できました。
治療のセカンドオピニオンも随時受け付けていますので、気になった方はお気軽にお問い合わせくださいね。
動物たちとご家族が永く幸せに暮らせるよう、
できる限り尽力していきます。
土日診療対応、セカンドオピニオンと夜間救急も臨時受付けます。外出な困難な方は往診にお伺いすることも可能です。
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