犬猫のCT検査;メリットとデメリット
犬猫の医療レベルの上昇とともに検査の幅も拡がってきています
今回は犬猫のCT検査について、ご家族が知っておくべき利点と欠点についてお話しします
犬猫の診療でCT検査は必要?不要? CT検査の有用性と弊害
獣医療の発展とともに様々な検査が実施されるようになってきています。特にレントゲン検査、超音波検査、内視鏡検査はほとんどどの病院でも実施可能になり、今ではCT検査やMRI検査も身近な検査になりました。混同されてしまうことも多いCT検査とMRI検査ですが、得意とする臓器が全く異なります。CT検査はレントゲンと同様にX線を用いた検査で、骨・腹部臓器・肺・鼻・口などが検査対象となる一方で、MRI検査は電磁波を利用した検査で脊髄や脳などの脳神経系の異常を見つけるために用いられることが多くなります。今回はより設置施設も多く汎用性も高いCT検査についてお話ししようと思います。
非常に有用性が高く情報量も多いCT検査は日本全国に広まることで早期診断や病気の拡がりの判定に加え、術式の選択などの治療法の決定にまで影響を与えています。極めて有用性の高いCT検査ですが、二次診療施設で働いていると弊害も多く目にします。その中でも最も目につくのは、「とりあえずCT検査」「よくわからないからCT検査」などといった乱用です。CT検査が診断に有用だからと言っても、この後に述べるようなデメリットも多く存在します。レントゲン検査や超音波検査などの負担の少ない画像検査を疎かにしてCT検査へと進むことは、獣医にとっては楽でも患者やそのご家族にはかなりの負担を強いることとなります。ご家族の方に覚えておいていただきたいのは、獣医にCT検査を進められたときに「本当にその検査が必要なのか」をご自身でもお考えいただきたいということです。昨今ではセカンドオピニオンも一般的になっておりますので、ご不安な際は遠慮することなく他の獣医の意見も聞くべきです。当院でもセカンドオピニオンは随時受け付けておりますので、いつでもご相談ください。
「CT検査が本当に必要かどうか」を考えてみてください、とは言ったものの、これは獣医でも悩むことがある非常に難しい問題です。今回は「診断がついている場合」と「診断がついていない場合」に分けて、CT検査の必要性についてお話ししてみたいと思います。
過剰検査、過剰医療にならないためにCT検査の必要性を知っておこう
About us
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診断がついていない場合のCT検査
まずは診断がつかない場合のCT検査についてお話しします。
動物病院で実施できる一次検査と言えば、血液検査、レントゲン検査、超音波検査が代表的なもので、機器の普及した今となってはほとんどの施設で実施可能かと思います。多くの症例はこれら一次検査で診断つくのですが、一次検査で診断が困難な場合には二次検査としてCT検査が必要になることがあります。そのような症例でも全く当たりをつけずにCT検査へと進むことは個人的にはお勧めしません。CTの有用性が広まるに従い安直にCT検査を実施する施設が増えてきていますが、疑われる疾患リスト(鑑別診断リスト)すら作成されていない段階でのCT検査は過剰検査となり得ますので控えるべきです。一次検査で当たりをつけられるか否かは個々人の知識や技量だけでなく機器の精度(特に超音波検査では新しい機器の方が診断能が高いと感じます)によっても左右されますので、「病気がわからないからCT」ではなく、セカンドオピニオンや二次診療施設への受診をまずは検討すべきでしょう。私も含め獣医師一人で網羅できる知識や技術には限りがあります。これは獣医師自身も患者さんも認識すべき重要なことです。
「なぜCTが必要なのか」
その明確な目的がはっきりして初めてCT検査の必要性がはっきりと見えてくるのです。当院ではセカンドオピニオンを随時受け付けていますので、ご希望の方はいつでもご相談ください。CT検査が必要と判断される際には、十分なインフォームドコンセントの上で信頼できる施設をご紹介させていただきます。
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診断がついている場合のCT検査
次に診断がついている場合のCT検査についてお話しします。
「診断がついているのだからこれ以上の検査は不要では?」と考えられる方もいますが、これは状況によって異なります。代表的なものは腫瘍性疾患(がん)でしょう。みなさんも聞いたことがあるかと思いますが、がんには「ステージ」というものがあります。ステージが低いほど腫瘍のサイズや全身的な拡がりが少なく、ステージが上がると腫瘍が大きく全身に拡がっている可能性が高くなります。多くのがんは初期は局所的に留まりますが、進行するとその部位に根を張り全身へと拡がっていきます。全身への拡がりを見逃したまま局所の手術を実施したりすれば、それは逆にその子にとってマイナスの結果に繋がることも少なくありません。そのためがんの治療においてはステージの判断が非常に重要で、そのためのCT撮影はとても有用な検査となります。また、肝臓や肺など一次検査では十分な評価が困難な臓器においてもCTはより詳細に病変を写し出し、治療方針の選択に役立ちます。
このように、診断がついている状況でもより精確な病気の拡がりを把握することでより適切な治療方針や予後判断に繋がると考えれる場合はCT検査は必要な検査であることを覚えておいてください。
CHECK!
特にCTの有用性が高い臓器や病気を知っておこう!
最後により具体的にCT検査の有用性が高い臓器や病気についてお話ししたいと思います。先ほどお話ししたがんの内容と被るところもありますが、ぜひ最後までお付き合いください。
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POINT01
腫瘍性疾患(がん)
なんと言ってもCTが有用な代表的な病気は腫瘍性疾患(がん)です。だからと言ってなんでもかんでもできものが見つかったらCTを撮影するというわけではありません。がんは種類によって転移のしやすさやしやすい臓器などがある程度知られています。もともと転移しにくいがんでサイズも小さく、一次検査でも転移が疑われない場合などは不要なことも少なくありません。一方で、サイズが大きく転移しやすいがんなどでは、一次検査で転移が見つからなくとも他の臓器に遠隔転移しているケースがあります。このような場合はCT撮影を積極的に検討してもよいでしょう。また、お腹の中に大きながんができている場合などは、そのがんを手術可能かどうか判断するためにCT検査を行うこともあります。もしも我が子ががんと診断された際にはぜひCT検査を検討していただきたいのですが、本当に必要かどうかは獣医師とよくご相談していただいた上で決めるようにしてくださいね。
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POINT02
頭部の疾患(口・鼻の病気など)
がんの並んでCT検査が有用な臓器が頭部になります。頭部は頭蓋骨を代表に上下のあごの骨や歯が組み合わさる非常に複雑な部位です。硬いものが苦手な超音波検査では得られる情報は少なく、レントゲン検査でも精確な評価が困難であることが少なくありません。ちなみに脳はCTのみの評価では不完全となるためMRI検査が必要となりますのでご注意ください。
鼻の病気や歯の病気は一次検査で得られる情報だけでは診断が難しくなることがほとんどです。それでも病状や背景からある程度の鑑別診断リストを作成することは可能ですが、詳細を知ろうとすればCT検査は避けられません。特に鼻については、鼻炎症状で実はがんだった、がんだと思ったらポリープだったなどの誤診が起こりやすい場所です。CT検査のみで確定診断までたどり着けるかと言われれば難しいのですが、より診断精度を上昇させ、がんなどの悪性疾患では早期治療を実施するためには頭部のCT検査は欠かせないものとなります。
頭部の病気で治療を受けているもののなかなかよくならないような子たちは、一度CT検査を検討してみてもよいかもしれませんね。
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POINT03
お腹の中の疾患
最後にお話しさせてもらうのお腹の中(腹部)の病気とCTについてです。腹部の評価はレントゲン検査と超音波検査でかなり精度が高く診断できるようになりました。加えて血液検査に反映されることも少なくないので比較的診断できることが多い部位となります。では、どんな時に腹部のCT検査が必要となるのでしょう?
腹部の病気の診断精度が上昇したとはいえ、そこには多くの臓器や血管、リンパ節などが存在しています。そのすべてを完全に評価することはどんな名医でも不可能でしょう。特に血管系のトラブル(Ex:門脈体循環シャント)や非常に小さな臓器(Ex:尿管)、複数の臓器にまたがるような病気(Ex:由来不明の腹腔内腫瘍)などではCTが必要となります。また消化管の病気で手術が必要かどうか判断が難しい場合や影響を与えている消化管の範囲を評価するときなどもCT検査が大きな力を発揮します。腹部の病気のCT検査では目的がはっきりしていることが多いので、その子の全身状態や費用などメリットとデメリットを獣医とよく相談して実施するかどうかを決めてくださいね。
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